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2024.08.30

デザイン

魅了される絵画から想う、魅了するデザイン表現について、あえて。

アートディレクター
デザイナーK

デモニッシュな芸術作品は?と問われれば、絵画「モナリザ」とまずは答えるでしょう。デモニッシュ(デモーニッシュ)を検索すると、「悪魔的」というあまりにも安易なワードを散見します。別に間違ってはいないのですが、文言に秘められた繊細な広がりを拒否するような解説は残念です。デモニッシュは音楽、文学をはじめとする芸術分野において外せないキーワードのようですが、広く社会に認知されているわけでもありません。

私なりの理解と様々な検索結果を照らし合わせ拡大解釈するならば、デモニッシュとは「得体の知れないもの、主体性を奪うもの、知性を狂わす魅惑的なもの」となります。好きな絵画は、往々にしてデモニッシュな香りを感じます。「モナリザ」を見て、単純に美しいなあと思ったことはありません。画集でしか見たことはありませんが、見る対象の全てを見透かしているような緊張感漂う神秘的な画面は、グロテスクに近い印象です。収蔵品38万点以上と言われるルーブル美術館でも人気No.1と聞きます。単に有名だから、せっかくルーブルに来たら見なきゃ・・・だけではなく潜在的に人はデモニッシュな魅力を求めているのではないでしょうか。

逆に心地良い、優等生的に綺麗な、穏やかな気持ちになる作品には興味がありません。安らぎすぎて眠くなります。眠くなる=脳を使わない作品には微塵もスリルがないからです。どんどん脳が退化してしまうようで、つまらないです。むしろ不穏な気持ちにさせてくれるような作品には吸い込まれます。様々な感情が駆け巡り脳が一気に活性化するから、飽きることがありません。

さて、上記の内容を読まれますと難解で商業デザインとは縁遠いブログと思われるでしょう。デザインは「情報を可視化するもの」であり情報整理(分析)〜構造化〜表現・製造この一連が仕事です。この仕事の中で案外陥りやすいのが「安全な選択肢」です。デザイナーはもちろん、クライアントの思考においてもです。「この路線が妥当かな」「競合他社の動向を意識すれば、ここは外せない、こうすべきだ」「〇〇なんだからそれらしさは残すべき」という正論(のようなもの)に安心していないでしょうか。新しい表現を模索していたはずが、案外大人しくまとまったみたいな。でもそれは間違いではありません。なぜなら店舗に行けば同一商品でも様々な企業の商品が並んでいるはずなのに、同じ配色やデザインに見えてくる、これが現実なのですから。でも人を魅了するにはやはり何か足りないような思いは残ります。極端に言えばデモニッシュな要素や感覚を取り入れてみてるとか?どう取り入れるかは別として。消費者の脳が錯覚(パニック)を起こすような、優等生的な常識を蹴散らパワーを持ったものが生まれるかもしれませんよ。

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