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2023.07.20
デザイン
人の琴線に触れる文化だからこそ・・・映画のポスターデザインには「情緒」や「余韻」が欲しい。
アートディレクター
デザイナーK
二、三十年前に高名な日本のデザイナーにして画家の方のコラムを拝見しました。
自分にとっては余程印象深かったのでしょう。今でも覚えております。
「日本の映画ポスターデザインは、ひどい。
ディレクターなりデザイナーが映画会社にやかましくいうべきだ」みたいな。
そのコラムの横には執筆者が直近にデザインされたポスターが掲載されていました。
刺激的な言葉とそれを実践したデザインには、ただただ納得でした。
大手映画会社の作品公開には多様な宣伝媒体が用いられます。
テレビコマーシャルや大々的なタイアップ企画も含め
近年はSNSの活用から、小さなチラシなど多彩です。
今回は昔ながらのポスターに注目させていただきます。
映画ポスターの役目は、まずポスターに注目していただき映画作品の存在を認知いただくこと。
さらにワンアクションさせ、映画館に足を運んでいただくことでしょう。
その行動に導くためのポスターデザインは、何を表現すべきでしょうか。
ここで冒頭の
「日本の映画ポスターデザインは、ひどい。
ディレクターなりデザイナーが映画会社にやかましくいうべきだ」
に戻ります。
私なりに勝手に解釈するならば、日本の映画ポスターは丁寧で親切ですが、
広告を通り越して取扱説明書になっている。
極端に言えば保険契約の際に、必ずお読みくださいと言われる約款のような
嫌悪感すら感じるものも散見します。(保険会社さんごめんなさい)
要素をそぎ落としてシンプルに!みたいな、デザイン指南書ばりのことを言うつもりではなく、
もっと「情緒」や「余韻」が欲しい、特に映画ポスターにはそれが欲しいと思います。
ここまでくると私個人の勝手な思い込みの領域ですが。
大袈裟な物言いでごめんなさいと言いながらも、海外の映画ポスターをご覧いただければ
この私の思い込みも共感いただける部分があるかもしれません。
広告でなく「アート」を感じますが、しっかり広告として完成されています。
日本と海外では映画宣伝のシステムが違う面も多々あるようなので、
一概に比較するのは得策ではありませんし、失礼な面多々あろうかとは思いますが。
この夏公開された有名アニメーション製作会社の作品は極端かつ徹底的に情報を開示しませんでした。
もちろんブランド力がしっかりしてるから成せることなのでしょうが。
映画館に行く前に何かもう見終わったつもりになるくらい情報過多な現代では、とても新鮮です。
映画のポスターは好きです。
日本の映画のポスターで好きなものはたくさんありますよ、もちろん。
これからも心震わすビジュアルとの出会いに期待します。